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アメリカインディアンの民間療法にも同様の記録が残されていることから、サンショウの仲間は古くから人間に利用されていたことがわかる。
日本の辛い香辛料のルーツがサンショウなら、現在、世界で最も生産量の多いのがトウガラシ。 さしずめ、スパイス界の王様といったところだ。
「コショウは多年生なので熱帯でなきゃ育たないんですが、トウガラシは3〜4カ月で実がなるので、熱帯の植物ですが北のほうでも暖かい時期ならとれるんです。 トウガラシのどっさり入った料理といえば韓国料理なんかその代表格ですけど、韓国のトウガラシは、もともと日本が輸出したものといわれています。
最初、日本はコショウを輸入して韓国に輸出していたんです。 それで韓国は日本にコショウの木があると思って再三よこせっていってきたんですけど、ないものは売りようがない。
市販のコショウをまいても芽は出ませんよね。 ところが同じように辛い新顔のトウガラシは、種をまいたらたちまち育って実をつけました。
それで、あっという間に韓国全土に広がったというわけです」トウガラシが普及していった理由には、温帯でも栽培できたということのほかにもう一つ、ビタミンCとカロチンが豊富であることがあげられる。 「冬に野菜が不足する農民にとっては、トウガラシは貴重な保存食だったんでしょう。

干したトウガラシを食べると体の調子がいいってことに気がついたんじゃないかしら。 辛さが体を温かくするという効果もありますし」ところで、ひとくちに香辛料といっても、じつにさまざまな種類があるのだが、世界中で香辛料と呼べるものは、いったい何種類くらいあるのだろう。
「それはちょっとわかりませんね。 ヨ−ロッパのハーブが有名ですが、調べてみるとどこの国でもさまざまな香りのよい葉などをハーブとして利用しています。
私は生のものをハーブ、干したものをスパイス、その両方をまとめて香辛料と呼んでいます。 タマネギとかニンニクは普通、野菜に分類されますが、使い方によってはハーブの1種になっています。
だってニンニクを油で炒めてごらんなさい、じつにいい香りになりますから」Yさんは、日本でほかの国ほどニンニクが普及しなかったのは、油で炒める料理がなく、この香りに気づかなかったからではないか、という。 「日本でスパイスや辛いものが好まれるようになったのも、油を使う機会が多くなったからだと思います。
油の消費量は年々上がっていますからね」最近では、町でタイ料理やインド料理、メキシコ料理などの香辛料たっぷりのエスニック料理を気軽に食べられるようになったし、近所のスーパーでもいろいろな種類のスパイスやハーブが手に入るようになった。 しかし、本当に香りの違いがわかって使いこなしているという人は、決して多くない。
「味覚は、味わうという学習によって養われるものですから、小さい頃から香辛料に親しんできていない日本人には、いますぐというわけにはいかないかもしれません。 インド並みに、豚用、鶏用、赤身の魚用、白身の魚用、野菜用というように専用のブレンド香辛料を使い分けるとまではいかなくても、食生活を豊かにするばかりでなく、生理的にもいろいろな活性のある香辛料を、毎日の食事にごく普通に使えるようになったら、すばらしいですね」首都圏2千万人の目前に広がる東京湾。
「汚れきった海」「死の海」「埋め立て予定地」……。 東京湾に抱くイメージは、いまは公害に汚れた海であるが、いずれは埋め立てられ、ベイエリアとして華やかでファッショナブルなビジネス街になる運命、といったところだ。
しかし、どっこい東京湾は海として生きている。 ここでとれる魚介類は江戸前と呼ばれ、いまでも築地で最高値をつけられ、味にうるさい料亭や寿司屋に直行する。
「はるかニュージーランドや南アフリカから輸入されてくるタイや、中国やブラジルから送られてくるヒラメを高いお金を出してありがたがって食べるのもいいが、江戸前の魚を食べてごらんなさい。 本当のうまさがわかるから」東京湾で先祖代々漁業を営んでいるOさんは、船橋の巻網船団・T漁業の船主である。

Oさんが高校を出て本格的な漁師になったのは昭和32年。 子どもの頃から夏休み、冬休み、そして暇さえあれば父親に連れられて沖へ出ていたから、この仕事についたのもごく自然のことだったという。
「昭和30年代といえばちょうど東京湾の埋め立てが始まった頃で、東京の漁師は漁業権の全面放棄をしてしまったし、埋め立てられた土地にはコンビナートや工場などが立ち並んでいった。 自然の海岸線もコンクリート岸壁となって企業の所有地化したり、防潮堤で仕切られたりと、昔からそこに暮らしてきた人びとにとっては、東京湾が遠い存在に感じられていった時期といえるでしょうね」それでも夏はスズキ、春と夏はイワシ、冬はコハダと、魚はちゃんととれていたし、当時のOさんは沖合(漁労長のこと)の息子として、本物の漁師になることで頭がいっぱいだったという。
現在、東京湾で水揚げされる魚は、スズキ、イワシ、コハダ、コノシロ、ボラなどのほかに、アナゴ、サョリ、コチ、タコ、アサリ、アオヤギなど、江戸前として珍重される魚介類は多い。 これらの魚がおいしい理由をOさんに聞くと、「東京湾には、多くの河川から窒素やリン、カリなどを大量に含んだ水が流れ込んでいます。
『水清ければ魚棲まず』じゃないけど、栄養分の多いところではプランクトンが大量発生するから、それを餌にする魚の数も当然増えるし、一尾一尾も肥えて脂ののったおいしい魚になるんです」Oさんら東京湾で操業する内湾巻網漁業は、「5トン未満の網船を使う」という条件のもとで操業している。 太平丸漁業では4.99トンの網船2隻で魚群を網で包囲し、とった魚は2隻の手船で漁港にもち帰っている。
この5トン未満の船がロープを入れて横幅600メートル、最大丈30メートルもの網を積んで漁獲するわけだが、これまでにひと網で、イワシなら120トン、スズキなら23トンも巻いたことがあるという。 しかし、ただたくさんとればいいというものではない。
市場の値段、魚がほかからどれだけ入ってくるかなどを読んでの出荷となる。 情報戦でもあるのだ。

「東京湾は漁獲に恵まれているから、今日とれるものは全部とる、ということはしなくていい。 できるだけ高値で売るために、いま需要はどれくらいあるか、ほかのイワシ漁場での水揚げのできはどうか、市場の動きはどうかなどをきっちりおさえなければならない。
船橋の魚は午後3時には水揚げを終えますが、翌日の朝には築地に出ている、ほかの地域より圧倒的に早い。 とにかく新鮮だし、脂がのっておいしいという評価をもらってます。
イワシなら、銚子でとれるものの倍以上の値段がつきますね」現在は、沖合を息子さんが継いでいる。 息子さんは大学まで進んだが、やはり海での生活のほうがおもしろい、と跡をとる決心をしたそうだ。
「でも、かつての自分がそうだったように、親父の目から見ると、何をやっているんだ、と思うことも多いですねえ」とOさん。 「このあいだも、スズキの魚群をイワシと間違えたうえ、網の巻き上げに手間どっているうちに一部を逃してしまった。
惜しかったねえ。

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